Last Updated on 2025年7月28日
離れた場所にあるPCを遠隔操作できる「リモートデスクトップ接続」は、在宅勤務やシステム管理など、さまざまなシーンで非常に便利な機能です。しかし、いざ使おうとした時に「接続できません」「認証に失敗しました」といったエラーが表示され、うまく接続できないトラブルに遭遇することは少なくありません。
リモートデスクトップ接続ができない原因は、ネットワークの設定、PC側の設定、ファイアウォール、ユーザー権限など、多岐にわたります。特に、接続元と接続先の両方のPCや、その間のネットワーク環境に問題がある場合、原因の特定が難しく感じられるかもしれません。本記事では、「リモートデスクトップ接続」ができない場合の具体的なトラブルシューティング方法を解説します。ファイアウォールの設定確認、ユーザー権限の確認、関連サービスの状態確認など、段階的に試せる効果的な解決策をご紹介しますので、ぜひ問題を解決し、スムーズなリモート操作環境を構築するために役立ててください。
目次
- 1. リモートデスクトップ接続ができない主な原因
- 2. まず試すべき基本的な対処法
- 3. 接続先PCのリモートデスクトップ設定を確認する
- 4. Windows Defender ファイアウォールの設定を確認する
- 5. リモートデスクトップを許可するユーザーを確認・追加する
- 6. リモートデスクトップ関連サービスの状態を確認・再起動する
- 7. ポートフォワーディング(ポート開放)とルーター設定を確認する
- 8. その他の解決策と注意点
1. リモートデスクトップ接続ができない主な原因
リモートデスクトップ接続ができない主な原因は以下の通りです。
- 接続先PCのリモートデスクトップ設定が無効: リモートデスクトップ機能自体がオフになっている。
- ファイアウォールのブロック: Windows Defender ファイアウォールやサードパーティ製セキュリティソフトのファイアウォールが、リモートデスクトップ接続に必要なポート(通常3389)をブロックしている。
- ユーザー権限の問題: 接続しようとしているユーザーアカウントにリモートデスクトップ接続の許可がない。
- ネットワークの問題:
- 接続元PCと接続先PCが同じネットワーク上にない(例: ルーターを超えた外部からの接続の場合、ポートフォワーディング設定が必要)。
- 接続先PCのIPアドレスが間違っている、または変更されている。
- ルーターのファイアウォールがブロックしている。
- インターネット接続自体に問題がある。
- リモートデスクトップ関連サービスの停止: リモートデスクトップ機能に必須のサービスが停止している。
- 資格情報の誤り: ユーザー名やパスワードの入力ミス。
- 接続先PCがスリープ/休止状態: 接続先のPCが低電力状態になっている。
2. まず試すべき基本的な対処法
リモートデスクトップ接続のトラブルに遭遇したら、まずは以下の基本的な対処法から試してみましょう。多くの場合、これらのシンプルな手順で問題が解決することがあります。これらの対処は、接続元PCと接続先PCの両方で試す必要があります。
2-1. 両方のPCの再起動
接続元PCと接続先PCの一時的な不具合や、ネットワーク接続の問題が原因の場合、両方のデバイスを再起動するだけで解決することがよくあります。再起動により、ネットワーク設定がリフレッシュされたり、サービスが正常に開始されたりする可能性があります。
2-2. ネットワーク接続の確認
まず、両方のPCがインターネットに接続できているか、基本的なネットワークの健全性を確認します。
- Webブラウザで何かウェブサイトが開けるか確認します。
- Wi-Fi接続の場合は、Wi-Fiルーターの電源が正常に入っているか、ランプの状態を確認します。一度ルーターの電源を抜き差しして再起動してみるのも有効です。
- 有線LAN接続の場合は、LANケーブルがしっかりと差し込まれているか確認します。
2-3. リモートデスクトップ接続先のPCがスリープ/休止状態ではないか
リモートデスクトップ接続先のPCがスリープモードや休止状態になっていると、接続することはできません。
- 接続先のPCが完全に起動していることを確認してください。
- 電源オプションの設定で、スリープや休止状態への移行時間を長めに設定するか、無効にすることを検討してください。
3. 接続先PCのリモートデスクトップ設定を確認する
リモートデスクトップ機能が接続先のPCで有効になっているか確認します。これが最も基本的な設定です。
- (接続先PCで操作)「スタート」メニューから「設定」を開き、「システム」→「リモートデスクトップ」へ進みます。
- 「リモートデスクトップ」のトグルを「オン」にします。
- 確認のダイアログが表示されたら「有効にする」をクリックします。
- 「このPCをリモートで接続できる人」の下に、リモートデスクトップを許可するユーザーが表示されていることを確認します。(後述の「ユーザー権限」のセクションで詳細を解説します。)
- 念のため、PCを再起動することを推奨します。
4. Windows Defender ファイアウォールの設定を確認する
ファイアウォールは、不正なアクセスからPCを保護するための重要な機能ですが、リモートデスクトップ接続に必要な通信をブロックしてしまうことがあります。Windows Defender ファイアウォールの設定を確認し、リモートデスクトップが許可されているか確認します。
- (接続先PCで操作)Windowsの検索バーに「Windows Defender ファイアウォール」と入力し、表示されたアプリを開きます。
- 左側のメニューから「Windows Defender ファイアウォールを介したアプリまたは機能を許可」をクリックします。
- 「設定の変更」をクリックします。(管理者権限が必要です)
- リストの中から「リモート デスクトップ」を探します。
- 「リモート デスクトップ」の項目で、「プライベート」と「パブリック」の両方にチェックが入っていることを確認します。通常、自宅や信頼できるネットワークでは「プライベート」が、公共のネットワークでは「パブリック」が適用されます。状況に合わせて適切にチェックを入れてください。(多くの場合、「プライベート」のみで十分ですが、パブリックネットワークから接続する場合は「パブリック」も必要です)
- 「OK」をクリックして設定を保存します。
注意:サードパーティ製のセキュリティソフト(ウイルス対策ソフトなど)をインストールしている場合、そのセキュリティソフト独自のファイアウォール機能が有効になっている可能性があります。その場合、Windows Defender ファイアウォールは無効になっていることがあります。お使いのセキュリティソフトのファイアウォール設定を確認し、リモートデスクトップ接続を許可するルールを追加する必要があります。通常、リモートデスクトップはTCPポート3389を使用します。
5. リモートデスクトップを許可するユーザーを確認・追加する
リモートデスクトップ接続は、デフォルトでは管理者アカウントにのみ許可されています。特定のユーザーアカウントで接続したい場合は、そのアカウントをリモートデスクトップユーザーグループに追加する必要があります。
- (接続先PCで操作)「スタート」メニューから「設定」を開き、「システム」→「リモートデスクトップ」へ進みます。
- 「リモートデスクトップを許可するユーザー」セクションで、「リモートデスクトップユーザー」をクリックします。
- 「リモート デスクトップ ユーザー」ウィンドウが開いたら、接続に使用したいユーザーアカウントが一覧に表示されているか確認します。
- もし表示されていない場合、「追加」をクリックします。
- 「ユーザーまたはグループの選択」ダイアログで、接続に使用したいユーザーアカウント名(例:
YourUserNameまたはMicrosoftAccount\YourEmail)を入力し、「名前の確認」をクリックします。ユーザー名が正しければ、フルネームに解決されます。 - 「OK」をクリックしてユーザーを追加します。
- PCを再起動することを推奨します。
6. リモートデスクトップ関連サービスの状態を確認・再起動する
リモートデスクトップ機能は、「Remote Desktop Services」というサービスによって管理されています。このサービスが停止していると、リモートデスクトップ接続はできません。
- (接続先PCで操作)Windowsの検索バーに「サービス」と入力し、「サービス」デスクトップアプリを開きます。
- サービスの一覧から「Remote Desktop Services」を探します。
- サービスの状態確認と再起動:
- 「状態」の列が「実行中」になっているかを確認します。
- もし「実行中」になっていない場合は、サービス名を右クリックし、「開始」を選択します。
- すでに「実行中」の場合でも、一度「再起動」を試すことで問題が解消されることがあります。右クリックして「再起動」を選択してください。
- スタートアップの種類:サービスの「スタートアップの種類」が「自動」になっていることも確認しましょう。もし異なる場合は、サービスを右クリックして「プロパティ」を選択し、「スタートアップの種類」を「自動」に設定して「適用」→「OK」をクリックします。
- 他の関連サービスとして、「Remote Desktop Services UserMode Port Redirector」や「Remote Desktop Configuration」なども確認し、必要であれば同様に再起動してみてください。
7. ポートフォワーディング(ポート開放)とルーター設定を確認する
リモートデスクトップ接続がインターネット経由(自宅の外から自宅のPCへなど)の場合、ルーターの設定(ポートフォワーディングまたはポート開放)が必須です。これは、外部からの接続をルーターがブロックしているためです。
- ルーターの管理画面にログインする: WebブラウザでルーターのIPアドレス(例:
192.168.1.1や192.168.0.1など)を入力し、ルーターの管理画面にアクセスします。ユーザー名とパスワードが必要です。 - ポートフォワーディング設定を探す: ルーターによって名称は異なりますが、「ポートフォワーディング」「ポート開放」「仮想サーバー」「NAT」などの項目を探します。
- リモートデスクトップのルールを追加する:
- 外部ポート (WAN Port): 任意のポート番号(例:
3389またはセキュリティのために別の番号、例:33890)を設定します。 - 内部ポート (LAN Port): リモートデスクトップの標準ポートである
3389を設定します。 - プロトコル:
TCPを選択します。 - 内部IPアドレス (LAN IP Address): 接続先のPCのローカルIPアドレス(例:
192.168.1.100)を設定します。このIPアドレスは、接続先のPCでコマンドプロンプトを開き、ipconfigと入力して確認できます。 - 設定を保存し、ルーターを再起動します。
- 外部ポート (WAN Port): 任意のポート番号(例:
セキュリティ上の注意: ポートフォワーディングは外部からのアクセスを許可するため、セキュリティリスクが高まります。可能であれば、VPN接続を利用したり、アクセス元IPアドレスを制限したりするなど、セキュリティ対策を講じることを強く推奨します。また、ルーターのファイアウォールも有効になっていることを確認してください。
グローバルIPアドレスの確認: 外部から接続する場合、接続先PCのグローバルIPアドレスが必要です。これは「What is my IP address」などで検索すると確認できます。固定IPアドレスではない場合、IPアドレスが変更される可能性があるため、ダイナミックDNSサービス(DDNS)の利用も検討すると良いでしょう。
8. その他の解決策と注意点
8-1. 接続元のPCからの疎通確認(Pingコマンド)
接続元のPCから接続先のPCにネットワーク的な疎通があるか確認します。
- 接続元のPCでコマンドプロンプトを開き、
ping [接続先PCのIPアドレス]と入力してEnterキーを押します。 - 応答があれば、ネットワーク的な接続は確立されています。応答がない場合、ネットワークの問題(ルーター、ファイアウォールなど)をさらに深く調査する必要があります。
8-2. 資格情報マネージャーの削除
以前に間違った資格情報(ユーザー名やパスワード)を保存してしまった場合、それが原因で接続できないことがあります。
- Windowsの検索バーに「資格情報マネージャー」と入力し、開きます。
- 「Windows資格情報」タブをクリックします。
- 接続先のPCに関連する資格情報(IPアドレスやコンピューター名を含むもの)があれば、展開して「削除」をクリックします。
- 再度リモートデスクトップ接続を試します。
8-3. IPアドレスの確認と固定
接続先のPCのIPアドレスが頻繁に変わる場合、それが接続失敗の原因となることがあります。
- 接続先のPCで
ipconfigコマンドを実行し、現在のIPアドレス(IPv4 アドレス)を確認します。 - 可能であれば、ルーターのDHCP設定で接続先PCのIPアドレスを固定するか、PC側で静的IPアドレスを設定することを検討します。
8-4. Windows Updateの確認
Windowsの更新プログラムには、バグ修正やセキュリティの改善が含まれています。リモートデスクトップに関する問題も、最新のWindows Updateを適用することで解決する場合があります。
- 「スタート」メニューから「設定」を開き、「Windows Update」へ進みます。
- 「更新プログラムのチェック」をクリックし、利用可能な更新があればインストールします。
- 更新完了後、PCを再起動します。
まとめ
「リモートデスクトップ接続」ができない問題は、ネットワーク、Windows設定、ユーザー権限、ファイアウォールなど、複数の要因が絡み合う複雑なトラブルです。まずは両PCの再起動やネットワーク接続の基本確認から始め、次に接続先PCのリモートデスクトップ機能が有効か、ユーザーは許可されているか、関連サービスは実行中かといった設定を段階的に確認していきましょう。
特にインターネット経由での接続の場合、ルーターのポートフォワーディング設定が非常に重要です。ファイアウォールやセキュリティソフトが通信をブロックしていないかも忘れずに確認してください。これらの手順を丁寧に実行することで、ほとんどの場合、リモートデスクトップ接続の問題を解決し、遠隔操作の利便性を享受できるようになるはずです。もし全ての対処法を試しても解決しない場合は、VPNの利用を検討したり、より専門的なネットワーク知識が必要になる可能性もあります。


